欲望としてのデザインについて
「日本のデザインー美意識がつくる未来」 原研哉
この本は以前岩波書店の「図書」で連載していた「欲望のエデュケーション」をまとめたものである。掲載当時から折にふれて読んでいたが、まとめて読むとたま違った感想が浮かぶ。デザインについて書かれた本であるが、その実今日の日本について論じ、その未来について様々な示唆を与えるものである。
序では、美意識というものが資源であるいう考えが展開される。そして、それに照らし合わるように、1章から6章までが展開されている。考えと行動を美しく、共鳴しあっている。
この本は前著「デザインのデザイン」と対になるような本である。「デザインのデザイン」でも、彼の状況把握力や先見性、行動力には驚いた。今回の本でも、日本やアジアを取り巻く状況を踏まえた上で、それを言語化しビジュアル化しようという意欲にあふれている。そしてそれが気持ちいい水準まで高められている。また、状況に甘んじるのではなく、自らが「コト」を起こすことによって未来を切り開こうとする強かさを伺うことが出来る。